「健康食品」
府和隆子
はじめに
人々は健康で長生きしたいという願いが本音であろう。豊かな社会になり、また急速な高齢化社会を迎えて、健康への関心がますます高まっている。反面、飽食時代と言われながら食生活がかなり偏っているとも言われている。その社会背景や消費者のニーズに答えて「健康食品」があふれんばかりに市場に出回っている。
しかし、「健康食品」に対する品質・効果・安全性・副作用に関する正確な情報が少ないのも現状であり、その結果健康被害が出たり、その被害に対する責任も曖昧で消費者の自己責任で済まされている。
その現状の中で、健康食品に関する言葉と現状を整理してみた。
1.「健康食品」とは
食品の中で不足した栄養素を補ったり、保健効果が期待されると考えられる「健康食品」には、国が認めている「保健機能食品」(「特定保健用食品」(トクホ)と、「栄養機能食品」)とそれ以外の「いわゆる健康食品」に分けることが一般に行われている。
また、「サプリメント」という言葉も広く聞かれるが、日本では「健康食品」とほぼ同じ意味をもつ。
「健康食品」の中で錠剤・カプセル剤・顆粒剤などの形状をもつものを、一般に「栄養補助食品」とか「健康補助食品」と呼ばれている。
しかし日本では名称の使い方が曖昧である。
2.「保健機能食品」とは
食品の機能には従来から知られた栄養機能(一次機能)と味覚・嗜好機能(二次機能)以外に三次機能として体調調節機能(体調リズムの調節・生体防御・疾病予防など)があり、それが健康維持・増進に役立つことが、多少科学的に証明されて来ていた。
また国の規制緩和や食品・医薬品区分の見直しなどの政策の背景と、野放し状態になっている「健康食品」に対して、消費者に適切な情報を提供するために、表示をみれば成分や健康機能が解り安心して選べる食品として、2001年「保健機能食品」を誕生させた。
「保健機能食品」として、「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」にわけている。
3.「特定保健用食品(トクホ)」とは
国のお墨つきを得た日本の「健康食品」のエースと考えられる。
1991年に以前からあった「特別用途食品」に組み込む形で「特定保健用食品(トクホ)」が誕生した。その後、2001年に保健機能食品制度の発足に伴い、「保健機能食品」の中に位置づけた。
人間における科学的試験(臨床試験)が要求され、合格した食品にその食品に含まれる栄養成分にどのような健康機能があるかという保健用途の表示と、マーク(人マーク)の表示が許可されている。
個々の食品ごとに許可される個別許可型の健康食品である。
現在許可されている主な具体的な機能は以下の8種類位に分類できる。
@ 整腸(成分:オリゴ糖、食物繊維、乳酸菌類) A 血圧調節
B 血糖値調節 C コレステロール調節
D 脂肪の増加・蓄積抑制 E ミネラルの吸収促進
F 骨の健康 G 虫歯低減
しかし「特定保健用食品(トクホ)」は医薬品のように病気の治療のためではなく、主たる対象者を半健康人・半病人(生活習慣病予備軍)と位置づけし、病気の予防つまり健康の維持・増進を目的に作られた食品であることを認識して利用すべきである。
トクホの誕生から16年、2006年2月には579種類、過去4年間で市場規模が約2.5倍に増える急成長をしている。しかし用途別では整腸関連が約64%(うち乳酸菌類が60%)と商品内容が大きく偏っているのも現状である。
高まる食品の安全性や表示のニーズに答えるために、従来の「保健機能食品」を広げ、「いわゆる健康食品」を取り組んでいく方向性が示されていて、ますます「健康食品」における「トクホ」の市場が広がると考えられる。
4.「栄養機能食品」とは
2001年にスタートした保健機能食品制度に合わせて作られた新分野の食品群である。
食品・医薬品区分の見直しで従来医薬品であったビタミン・ミネラル・ハーブ・アミノ酸を食品に移行する政策がとられ、現在ビタミン12種(ビタミンA・B1・B2・B6・B12・C・D・E・ナイアシン・葉酸・ビオチン・パントテン酸)、ミネラル5種(カルシウム・鉄・マグネシウム・銅・亜鉛)が「栄養機能食品」に指定されている。
医薬品であったので、安全性が認められたものとして、一定の規格基準(成分ごとに1日の摂取量の上限値と下限値が決められている)を満たしていれば許可される。(規格基準型)
許可されたものは栄養成分の機能表示が認められる。
ビタミンやミネラルはヒトの体内で作られないので欠乏症が起きやすい。しかし大量に摂取すると過剰症が起こる場合もあるので過剰摂取の害を防ぐために注意喚起が義務付けられた。
飽食時代でありながら、微量元素であるビタミン・ミネラルの不足が大きな問題になっている。
その原因は食生活の洋風化、ストレスによるビタミンの消耗、農薬や化学肥料づけの土壌からとれる野菜や果物のビタミンの減少(食材の栄養価低下)などが上げられる。
このようにビタミン・ミネラルを医薬品でなく食品と捉えて、生活習慣に見合った総合的な補給を心がけることを提唱している。
今後、医療費削減の国の方針より規格基準が設定されていない栄養成分(他のビタミン・ミネラル、タンパク質、脂肪酸、食物繊維など)について、順次基準が設定され「栄養機能食品」に組み込まれる見込みである。
5.「いわゆる健康食品」とは
日本では国の法律や基準がなく、多種類の食品が市場に出回っており、多くの問題点をかかえているのがこの「いわゆる健康食品」である。
しかしその中にもマークのあるものが存在する。健康ブームが本格化してきた1986年、玉石混淆の商品が市場に溢れる状況で、消費者の選択に役立てようと、国が動き出す前に(財)日本健康・栄養食品協会が協会独自の基準を設け、それに合格したものにJHFAマークの表示を許可した。
国認定の二種の「保健機能食品」と異なる点は、人間における科学的試験(臨床試験)のデータがなくても認定が受けられるが、特定の保健目的への効能(健康機能)の表示ができない。
しかし「いわゆる健康食品」にも医薬品から移行したもの[コエンザイムQ10(CoQ10)、L-カルニチン、α-リポ酸(チオクト酸)]、外国で医薬品として認められているもの[イチョウ葉エキス、セント・ジョンズ・ワート(西洋おとぎりそう)]や科学的根拠のあるものもかなり存在している。
良質なものを選ぶ賢い目を持ち、基本的な点をきちんと理解して、自分に適した用い方をするのが望ましいと考えられる。
おわりに
表示とメーカーの信頼性を頼りに、「健康食品」を賢く利用して自らの健康を自ら守る時代になってきていると考えられる。
最後に「健康食品」とのつき合い方
@ 健康の維持・増進の基本は、日々のバランスとれた食生活、適度な運動、規則正しい生活・ 休養が主であり、「健康食品」はあくまで補助(従)という関係を間違わないこと。
A 成分内容を良く見る。摂取目安量を守る。注意事項を守る。
B 信用のある製品、企業を選ぶ。
【参考文献】「最新サプリメント・ガイド」 板倉 弘重 編著 日本評論社
「科学的根拠に基づくサプリメントの基礎知識」 監修:橋詰直孝 編集:堀美智子
薬事日報社
「薬局5 サプリメントの使い方・選び方」 南山堂
厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/
(財)日本健康・栄養食品協会ホームページ http://www.jhnfa.org/